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相性問題発生!OTGケーブル交換で発生した相性問題の本質を考察全員向け(プログラミング無関係)

2025/06/01
相性問題発生!OTGケーブル交換で発生した相性問題の本質を考察

 筆者の環境で、スマートフォンと、有線イヤホン用の音に変換する DAC との間を接続するOTGケーブルを交換しました。 その際に、いわゆる相性問題が発生しました。 相性問題というと、問題のないところに発生する不調の印象がありますが、本質的には規格への適合不足に起因する問題です。 わかりやすく解説します。


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Lightning - USB C の ケーブルが壊れて購入


 この記事で購入した DAC の acoustune AS2002 には、 iPhone と接続するためのケーブルが付属しています。 しかし、触ると切断するようになりましたので、ケーブルを購入することにしました。

3本中1本しか動作しない


 iPhoneに繋げる Lightning 端子と、DACに繋げる USB C 端子が付いた、長さ10cm程度のケーブルを、結果的に3本購入しました。 そのうち acoustune AS2002 との接続は、下図の通り1本しかうまくいきませんでした。
ケーブル
価格帯
AS2002との接続
ケーブル1
1000円
反応しない
ケーブル2
2000円
音が出ない
Cayin CS-L2C
3000円
良好

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1本目:OTGではないケーブル1


 ケーブル1は、接続しても反応がありませんでした。
 iPhone と DAC を接続するには、OTG ケーブルが必要です。
 ケーブル1は、OTGケーブルではなく、規格上繋がりませんでした。

OTGとは


 OTG とは USB On-The-Go という規格です。 これにより、パソコンを介さずにデータのやり取りができるようになります。
 つまり、iPhone と周辺機器を直接接続する今回のようなケースでは、OTGケーブルが必要です。

データ転送ができてもOTGとは限らない


 1本目にOTGではないケーブル1を買ってしまったのは、筆者の知識不足です。 これはケーブル1の不具合ではありません。
 ケーブル1の説明に「データ転送」とあったので油断しました。 これは、パソコンを介せばデータ転送ができることを意味します。 つまりスマートフォンと周辺機器を接続するには不足です。
 スマートフォンと DAC を接続するためには 「OTG」の記述を確認してから購入しましょう。

2本目:制御拡張に非対応のケーブル2


 ケーブル2は、接続することで iPhone および acoustune AS2002 の表示は切り替わるのですが、イヤホンから音が出ませんでした。
 ケーブル2および、3本目の Cayin CS-L2C は、どちらもOTGケーブルです。 さらに、それぞれのサイトの商品情報ではどちらも、ハイレゾに対応していると、アピールされています。

OTGのUAC階層とは


 OTGの中には USB Audio Class (UAC) という規格があり、以下の階層があります。
機能
UAC 階層
基本機能
1.0
ハイレゾ
2.0
制御拡張
2.0

ハイレゾと制御拡張のUAC階層は2.0


 ハイレゾと制御拡張の UAC 階層が、どちらも2.0です。
 つまり、ハイレゾに対応していれば、UAC 2.0 に対応しているため、 同じ階層の、制御拡張の規格にも対応していると、推測できます。

acoustune AS2002 は制御拡張対応


 acoustune AS2002 は、DAC から iPhone 側のボリューム(音量)を操作できるので、この制御拡張規格に対応しており、 ケーブルもその対応が必要と推測できます。

ケーブル2はハイレゾ対応だが制御拡張非対応


 しかしおそらく、ケーブル2は、ハイレゾ対応ではあるものの UAC 2.0 へ対応しているわけではなく、制御拡張規格に非対応で、動作しなかったのでしょう。
 サイトを確認しても、このあたりの説明はありませんので、事前の発見は難しいです。

相性問題


 ここまでをまとめます。
 ケーブル2はOTGケーブルですが、acoustune AS2002 と接続しても音が出ません。 一方で、ほとんどの DAC との接続には、問題がありません。
 これがいわゆる相性問題となります。

相性問題の本質は規格への対応不足


相性問題発生!OTGケーブル交換で発生した相性問題の本質を考察 相性問題が発生するケース:規格不適合
 相性問題というと、どちらも問題ないけれど繋がらないといった印象を受けます。
 しかし実際には、どちらかが規格への適合が不十分なことに起因する問題です。 要求スペックが規格の範囲を超えているか、対応スペックが規格を満たしていないという不具合が原因の可能性が高いです。
 そして表示上の差異は無くても、規格の適合度合いに差があるのは、典型的な相性問題のひとつです。
 今回のケースは、ケーブル2が、UAC 2.0 の制御拡張に対応していないのが問題だと推測できます。 ただし、ケーブル2 は UAC 2.0 対応を保証しているわけではありませんので、単純に悪いとは言えません。

免責の記述を発見


 ケーブル2 のサイトで、以下の記述を発見しました。

本製品は、〇〇が独自に開発したデジタル接続用ケーブルです。 (中略)製品を恒久的に使用可能であることをお約束するものではございませんので、予めご了承ください。

 つまり、独自実装なので、世の中の規格を満たしていなかったとしても当社に責任は無いよ、ということですね。 今回の結果を裏付ける記述です。

相性問題への対処は事前確認で


 この状況において、ユーザー視点では、きちんと事前に接続確認してから購入しましょう、ということになりそうです。
 筆者は購入時、OTG ケーブルや UAC 規格への理解が不足しており、事前確認の必要性を認識していませんでした。
 色々調べてみると、USB まわりの仕様は複雑で、筆者の想定以上でした。 可能な限り、事前確認するようにしましょう。自戒を込めて。

ケーブル2の調査結果はほとんどのDACで問題なし


 説明の順番が前後しますが、この結論に至る前は、ケーブル2 の初期不良を疑って、e☆イヤホンの店舗に伺って確認してもらいました。 丁寧に調べてくださった店員さんおよび、丁寧にメール対応してくださった e☆イヤホンの担当の方に、感謝しております。
 結果として、以下の状態で、初期不良ではないと結論付けられました。
  • 他の携帯型 DAC との接続は問題なし
  • お店の acoustune AS2002 も同症状 (別筐体も音が聴こえない)

 この結果および、acoustune AS2002 は iPhone のボリュームを調整できるという特徴があることから、制御拡張規格の対応が必要であろうという、本記事の結論に至りました。

3本目:Cayin CS-L2C は問題なし


相性問題発生!OTGケーブル交換で発生した相性問題の本質を考察 Cayin CS-L2C
 [PR]Cayin CS-L2C は、この写真の箱で届きました。
  acoustune AS2002 と問題なく接続できています。 丁寧に規格に対応してくれているのでしょう。 良製品と言えそうです。
 ケーブルは消耗品ですので、対応している製品がひとつでもあることで助かります。 他の製品に比べて割高ですが、今後は Cayin 社にお世話になると思います。
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まとめ


 本記事では、筆者の環境で発生した、いわゆる相性問題について解説しました。
 相性問題は、本質的には規格への適合不足であることを、わかりやすく解説いたしました。 技術的な問題も、根本原因を理解すれば、対処方法が見えてきます。 同様の問題に対する参考になれば幸いです。

補足

  • 本記事で紹介した各製品は各社の登録商標または商標と思いますが「®」「™」等の表記はしておりません。

カテゴリー:オーディオ推し,スマートフォン向けイヤホン
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